皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 と、そのとき、ミレーヌにはいつもの天の声が聞こえてきた。

 ――ミレーヌ。あなたは回復魔法が使えるわ。ここには、あなたの回復魔法を待っている人がいる。

(え? 私、回復魔法が使えるの?)と心の中で天の声に問う。

――えぇ、あなたのお兄様も言っていらしたでしょ。あなたはあの白魔導士団長の娘ですもの。潜在的な魔力が高いのよ。私が教えるから、この第三騎士隊のみんなを助けてあげて。

 天の声はミレーヌにとって信じるべきに値するものである。この声が言うのであれば、ミレーヌも回復魔法が使える、はずだ、と思う。

「お兄様」
 突然、ミレーヌが声をあげた。
「私、回復魔法でみなさんを救います」

「今、使えないと言っていただろう?」
 マーティンのそのツッコミは適切である。

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