皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました
 副隊長の告白に、先ほどから背筋に冷たいものが流れ、止まらない。これが悪寒というものか。

「想像しただけで鳥肌が立つな」
 言い、マーティンは露店で買った冷たい飲み物を、グイッと飲んだ。残念ながらアルコールではない。

 結局この三人。お祭りに同行するような相手、家族がいないことから、休暇中にも関わらず、任務を任されてしまった。二つの隊が休暇となると、人手も足りないらしい。人手が最も多い日の今日、お祭りの見回り、という嬉しいのか悲しいのかわからない微妙な任務だった。

「隊長、噂をすれば。というやつではないですか?」
 とある隊員が、小さな声で言う。
「あれ、エドガー隊長ですよね?」
 エドガーに気づかれないように、彼はそっと指を向けた。

 言われ、その隊員の指先を追いながら、マーティンは顔を向けた。

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