年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
「さっきメールが入ってたんだ。今日はありがとう、おやすみ」
「・・・おやすみなさい」
不機嫌そうな横顔を見せて永井さんが車を発進させた。
「ふう・・・」
やれやれといった表情で社長がため息をつく。
「大変ですね、これからお仕事ですか?」
「ああ、あれ? 嘘だよ嘘」
「へっ」
「部屋で飲み直そう」
社長が私の腕を引っ張り、エレベーターへ連れて行く。
「ちょっ、こま、困ります」
「何で? 君はボディーガードでしょ。しっかり守ってよ」
「今、何時だと思ってるんですか? 残業代いただきますよ」
到着したエレベーターに乗り込むと社長は乱暴に最上階のボタンを押した。
「何時? 私のことは二十四時間護衛してもらいます。それは警備の派遣会社にもお伝えしておりますし、給料は月これだけお支払いするということで了承済みです」
急に社長モードに入った社長が、スーツの内ポケットからスマホを出すとかろやかに操作し、メールの文面を私に突きつける。ありえない金額が記されていた。こんなの聞いてない。
「いいですか、これは契約です。あなたに拒否権はない」
結局、私たちは部屋でシャンパンを飲んでいた。ふかふかのソファは居心地が悪く、私はソファの端っこに身を寄せている。
社長はいくつか仕事のメールがきているといい、スマホを片手にしばらく画面を動かしていたが、スーツのポケットにしまうと、
「りこねえ、こっちおいでよ」
とエレベーターの中とはうってかわって子犬のような顔で言った。
「だだ大丈夫です! ここが落ち着きますから」
「ぶはっ、そんな警戒しなくてもいいじゃん」
社長の笑い顔が見たくなり、そっと横目でうかがう。この笑い顔には、嵐の面影があるのだ。ふっと社長が真面目な顔になる。
「さっきのそんなに嫌だった?」
おそらくこれが社長の決め顔なんだろうけれど、私にはまったく響かない。女たらしモードできてくれたほうが拒絶しやすいからありがたい。
「はい、困ります」
「困るってだけで、嫌ではなかったんだね」
「違っ・・・」
「違うの? じゃあ、ぼくの嫌い? りこねえ」
いつのまにかすぐ隣に社長の体があって、私は猫に追いつめられたネズミのようにソファのすみで身を固くした。だからその甘えた嵐モードになると私はダメなのだ。体の奥がむずむずして、社長を抱きしめたくなってしまう。
「・・・おやすみなさい」
不機嫌そうな横顔を見せて永井さんが車を発進させた。
「ふう・・・」
やれやれといった表情で社長がため息をつく。
「大変ですね、これからお仕事ですか?」
「ああ、あれ? 嘘だよ嘘」
「へっ」
「部屋で飲み直そう」
社長が私の腕を引っ張り、エレベーターへ連れて行く。
「ちょっ、こま、困ります」
「何で? 君はボディーガードでしょ。しっかり守ってよ」
「今、何時だと思ってるんですか? 残業代いただきますよ」
到着したエレベーターに乗り込むと社長は乱暴に最上階のボタンを押した。
「何時? 私のことは二十四時間護衛してもらいます。それは警備の派遣会社にもお伝えしておりますし、給料は月これだけお支払いするということで了承済みです」
急に社長モードに入った社長が、スーツの内ポケットからスマホを出すとかろやかに操作し、メールの文面を私に突きつける。ありえない金額が記されていた。こんなの聞いてない。
「いいですか、これは契約です。あなたに拒否権はない」
結局、私たちは部屋でシャンパンを飲んでいた。ふかふかのソファは居心地が悪く、私はソファの端っこに身を寄せている。
社長はいくつか仕事のメールがきているといい、スマホを片手にしばらく画面を動かしていたが、スーツのポケットにしまうと、
「りこねえ、こっちおいでよ」
とエレベーターの中とはうってかわって子犬のような顔で言った。
「だだ大丈夫です! ここが落ち着きますから」
「ぶはっ、そんな警戒しなくてもいいじゃん」
社長の笑い顔が見たくなり、そっと横目でうかがう。この笑い顔には、嵐の面影があるのだ。ふっと社長が真面目な顔になる。
「さっきのそんなに嫌だった?」
おそらくこれが社長の決め顔なんだろうけれど、私にはまったく響かない。女たらしモードできてくれたほうが拒絶しやすいからありがたい。
「はい、困ります」
「困るってだけで、嫌ではなかったんだね」
「違っ・・・」
「違うの? じゃあ、ぼくの嫌い? りこねえ」
いつのまにかすぐ隣に社長の体があって、私は猫に追いつめられたネズミのようにソファのすみで身を固くした。だからその甘えた嵐モードになると私はダメなのだ。体の奥がむずむずして、社長を抱きしめたくなってしまう。