年下イケメンホテル王は甘え上手でいじわるで
「だって、あんな激しいキスして、あんなに感じてたじゃん」
 耳元に口をよせてささやいてくる。
「ちょちょちょっと! やめてください」
 私はぐいっと社長の体を押しのけた。「だ、だからあれは、懐かしさがさせた行動というか・・・美化された思い出効果というか・・・社長もそうだと思うんです。もし、私と普通に出会ってたら、私のことなんて好きになりますか? こんなチビで地味でつまらない女。社長も昔の思い出にひたっているだけで、実際私と付き合ったらすぐ退屈して別れたくなると思います」
「そんなことないと思うけどなあ。ぼく、りこねえの見た目も性格もめちゃくちゃタイプなんだけど」
 ううう、この男は・・・無自覚にたらしすぎる。
「だから思い出効果です」
「それでもいいじゃん。まずは付き合ってみないと何もはじまらないし」
「無理です」
 再び即答する私に、今度は社長はぶはっと吹き出した。
「りこねえ、意味わかんねえ~」
 けらけらと笑うその姿は、愛しくてかわいくて、この人がまぎれもなく嵐なんだと思わされる。でも、ほだされている場合ではない。社長のキスやソファの上での手際の良さ・・・。相当遊んでいることは間違いない。そんな遊び人とうっかり付き合って捨てられて、どん底に落ちるのは絶対に嫌だ。だって、私は・・・もし、この人と付き合ってしまったら、本気で・・・そこまで考えてそれ以上は頭の中から振り切った。
「とにかく無理です」
「まあ、りこねえらしいっちゃらしいね。でも、ぼくあきらめないから。とりあえず、生理休暇ということで、りこねえは一週間お休み。ぼく、その間、シンガポールに行ってくるから」
「えっ、シンガポール?」
「そう、シンガポールのホテルを買収することになったんだよね。初の海外進出だよ」
「お供します。護衛させてください」
「大丈夫大丈夫。さっきも言ったけど、ぼくもそこそこ強いから。まあマフィア相手だと無理かもだけど」
「私も厳しいです」
「あはは、でしょ。だからりこねえはゆっくり休んで」
「私、生理は軽いほうなんです。それに一週間もお休みなんて・・・」
「んじゃ、その間、ぼくと付き合っていいかどうか考えておいて。それが仕事」
「考えなくても答えは出てます」
「ひどいよ、りこねえ~」
と言いながら、社長はどことなく楽しそうだ。
「じゃあおやすみ、りこねえちゃん」
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