【5/10書籍2巻3巻同時発売】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 スイレンは慌てて自分の上にある空気の傘をリカルドの頭上に移動させた。生活魔法が苦手なスイレンは傘を一つしか生み出すことが出来ないので、自分は土砂降りの雨にすっかり濡れそぼってしまい、また驚いた顔をしたリカルドはまたスイレンの方向を向いて首を振った。

「あんまりこの魔法上手じゃないんです……その傘、すぐに消えちゃうので、早く中央に移動してくださいね」

 つめたい雨に打たれながら笑ったスイレンはリカルドの困った顔をして首を振る姿をもう見たくなくて、身を翻していつも歩いて花を売っている通りを走った。

 バシャバシャと音を立てて足元で水が跳ねる。それでも、あの人とすこしでも会えたことがどうしようもなく嬉しくて、走りながらも笑ってしまった。

 間近で見ると睫毛が長くて彫りが深く、とても綺麗な顔をしていた。無表情ではあったが戸惑っているかのように目が揺れていた。

 きっと彼はこんな自分のことなど、すぐに忘れてしまうかもしれない。

 でも、すこしの間だけでもその心を和ませることが出来たのなら、もう何も要らないと思ってしまう程に。
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