【5/10書籍2巻3巻同時発売】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 戸の向こうからリカルドの声がしてスイレンは慌てて歌うのをやめた。思わず夢中になっていたのが彼に聞かれていたと思うと無性に恥ずかしい。

「スイレン、入って良いか?」

「リカルド様?」

 その質問に唖然としている間にリカルドが戸を開けた。笑顔で入ってくる彼に制止するのも忘れてスイレンは湯船に浸かったまま背の高い彼を見上げた。リカルドは服が濡れるのも構わずに床に膝をついて目線を合わせる。

「……いつか、俺が檻に入っていた時に歌ってくれた歌だ。あの時を思い出して我慢できず入って来てしまったごめん」

 スイレンは勇気を出して檻の前で歌ったことを思い出した。そうか、あの拙い歌を彼は覚えていてくれたんだ。今も。

「これは、わかりにくいけど恋の歌なんです。長く会えなかったけれどやっと会えたっていうそんな曲なんですよ」

 リカルドはうんと頷いて、スイレンの顔に自分の顔を近づけると、やさしく何度か軽いキスをした。唇を食んで最後にぺろっと舐めると名残惜しそうに唇を離した。
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