離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 デスクの前に座り、窓の外を眺めていた社長が、クルリッと、向きを変えた。

「あっ! 」

 顔を見て、思わず声を上げてしまい、慌てて口元を掌で押さえる。

 (……無、の人だよ! ウソ、この人が社長なの? もっと、おじいちゃんを想像してたわ)
 じっと彼の顔を、見つめる。

(そう言えば、社内報で社長が世代交代して、イケメン若社長が、どうのこうのって載ってた様な…… 。 メイクアップの欄しか見ないからな、うる覚えだったわ…… )


「昨日は迷惑をかけたな」

「あ、いえ、彼女はあの後、無事にご両親に会えましたか? 」

 社長はカタッと、立ち上がり、私の前に歩いて来ると、真っ直ぐに私を見つめて来きた。

「ああ、君のお陰様で、うちのホテルも彼女の国へ進出出来る事となった。 改めて礼を言う。 ありがとう」

 眼鏡の奥の瞳を細めた彼は、口元は笑ってないが、おそらく、微笑んでいるのか、無表情の中にも、表情の変化が見て取れた。

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