離婚するはずだったのに記憶喪失になって戻ってきた旦那が愛を囁き寵愛してきます
 しがない、サラリーマンの私には、社長様に逆らう事なんて出来ないです…… と、諦めかけた時だった。

「やだわ! パートナーなら私がいるじゃないですか! 蓮斗さんのお母様からも、一緒に挨拶に来るように、言われてますのよ」

「…… 白鳥、君には、秘書として招待客の接待をお願いした筈だが 」

「もちろんですわ! 蓮斗さんの妻として、生涯のサポートは私が請け負いますから、安心して下さいね」

 ホーッホホッ!と、手を口に当てがって笑う秘書。

「…… パートナーが見つかったようですので、私はお役目御免と言うわけで、業務に戻らせて頂きますね」

 自分で言っておきながら、チクッっと心が痛む。

「…… 君で良い」

 パシッっと手首を掴むと、私の顔を覗き込んできた。

「イエイエ、社長のパートナーになりたい人なんて、星の数程いますよね。 丁度、ここに私が居たからって、そんな適当に選んじゃダメですよ 」

 両手を手の前で振って、辞退を申し出る。

「シエナ、君で良い! 」

 眼鏡の奥の強い眼差しと、目が合って、ドキリッと心臓が跳ね上がる。
 

「嫌だわ蓮斗さん、照れていらっしゃるのね。 私とあなたの仲は両家公認ですのに 」

 スリスリッと、社長の肩に頬を寄せる秘書に、手でグイッっと身体を押し退け引き離す。

「君は、自分の仕事を全うしろ」

 社長がジロリッと冷たい視線を向けた。

「はぅんっ…… そんなドSな蓮斗さんも好き 」

 目をハートにさせて、良いわ、会場でお待ちしてますわ、と呟いて秘書は化粧直しに向かった。


< 29 / 205 >

この作品をシェア

pagetop