エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「いや、違う。彼女ではない」
雅史が即答した瞬間、心臓をひと突きされたような衝撃が楓に走る。
あたり前の事実なのにものすごい威力だった。
なんの躊躇いもなく否定した声が耳に残り、頭の中を反響してぐるぐる回る。
(わかっていたのに傷つくなんて……)
身勝手な苦しさに胸を押さえた。
しばらく静まり返っていた部屋から、再び芹菜の声が響く。それも振られたあととは思えない愛らしい声だ。
「でも私との結婚は院長も望んでいることじゃないのでしょうか」
逃げられないと言いたいのかもしれないが、その切り替えの早さが少し不気味でもある。
「一番肝心なのは当事者の気持ちだ」
「そうかもしれませんけど、それなら当事者の私の気持ちも尊重してもいいのかなって思います」
雅史が言葉に詰まる。たしかに彼女も当事者である。