エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「今夜のお食事は我慢しますけど、また誘わせてください」
「何度誘われても同じだ」
「好きになってもらえるよう頑張りますから」
雅史に拒絶されてもなんのその。楓にはない強さが芹菜にはあった。
彼女が「お先に失礼します」と声をかけると同時にドアが開く。そこにいた楓に目を丸くしてからにこやかに微笑みかけた。
「海老沢さん、私これで帰りますね」
「……お疲れ様でした」
おっとりして弱そうに見えるのに、まったくへこたれない彼女が怖い。院長という強力な味方のいる芹菜に怯んだのは楓だった。
中に入り、楓も帰り支度をはじめる。
「海老沢さん、このあと時間ある?」
婚約者の誘いには乗らないのに、なぜ楓を誘うのだろう。
首を傾げてすぐ、その理由に思い当たった。あの夜の口止めだ。どこからどう好きな女性の耳に入るかわからない。