エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「知らない番号には出ないと決めています」
「さすが真面目な楓だな」


クスッと笑いながら、英太がエンジンをかけて車を発進させる。その瞬間、遠くから「海老沢さん」と呼ぶ声がしたような気がしたが、窓の外を見ても誰もいなかった。

雅史が楓を呼ぶ幻聴が聞こえるなんて、よっぽど深刻な状態だ。


「何件も入ってる着信、俺の番号だから登録しておいて」


登録しておく必要はあるのかなと首を傾げつつ、曖昧に頷く。


「どこへ行くんですか?」
「どこって楓のマンションだけど。送っていくって言っただろう。なにか食べられるなら食事に連れ出すけどどうする?」
「どうして食事なんて」


そう尋ねてから野暮な質問だと悟る。
英太は、父親が楓の結婚相手として望んでいる男だ。


「もちろんデートだよ。婚約者同士、親睦を深めておきたいからね」
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