エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

あっけらかんと言いのける英太に戸惑う。それは芳郎が勝手に決めたことであって、ふたりの間でそのような約束も話もしていない。


「婚約はしてません」


きっぱりと訂正する。楓と英太は何年も前に終わった関係だ。
それでも英太は無邪気な笑顔を浮かべている。

昔もそうだった。どことなく掴みどころがなくて本心が読めない。高校生のときに思いきって楓が告白したときの彼の返事も、『じゃあ、付き合おうか』と軽いノリだった。

付き合っている間も彼女というよりは妹のような接し方で、本当に好きでいてくれているのか確信はなかった。
楓の留学と英太の海外赴任が重なり、あっさり終止符を打たれたときに〝やっぱり本気じゃなかったんだ〟と妙に納得したものだ。


「細かいことは気にするなって。近々するんだから」
「私、英太さんとは結婚――」
「しないとか言うなよ? 昔はそのつもりだったじゃないか」


信号待ちで車が止まり、英太が運転席から顔を覗き込んでくる。
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