エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
たしかに将来は結婚しようかという話になったことはある。でも付き合うとき同様に軽い口調だったうえ芳郎にも反対され、あっけなく流れた。
「それは過去の話で、今は……」
「好きな男でもいるのか?」
単刀直入に聞かれたため、吸い込んだ息でむせ込んだ。
「楓はわかりやすい」
「ち、違います。好きな人なんていません」
そう口に出せば、心だって誤魔化せる。言葉には魂が宿ると聞くから、口にすればそのうち真実に変わるに違いない。
馬鹿げた祈りをするくらい、今夜の楓は雅史に捕らわれている。
ほかに好きな女性がいると知ってはじめて、想いの大きさに気がついた。ただの憧れではない。好きで堪らない相手なのだ。
「それなら俺を好きになればいい」
「無茶苦茶なことを言わないでください」
英太との恋は、楓の中でとっくにカタがついている。未練はない。