エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

《少し話せるか?》


どんな話か知りたいようで知りたくない複雑な気持ちだが、ここまで来た雅史を追い返すわけにはいかない。
オートロックを解除し、雅史がエレベーターで上がってくるまでの数分間で顔を洗い、髪をざっと整える。急いで着替え、すっぴんは色つきリップでごまかした。

もう一度鳴ったインターフォンで玄関のドアを開ける。顔を覗かせた雅史は、かすかに疲れを滲ませていた。

耳にも胸にも痛い会話を立ち聞きしたあとだけに、雅史と顔を合わせるのは正直きつい。


「おはようございます。すみません、ノーメイクで」
「素顔のほうが綺麗だから心配するな」


そんなわけはないとわかっていても、〝綺麗〟に動揺して目が泳ぐ。
ほかに好きな女性がいるのなら、それ以外の女性にそんな褒め言葉はどうだろう。


「ひとつだけ忠告させてください。安易に綺麗とは言わないほうがいいです」


そんな言葉ひとつに翻弄される女がいるのは知っていてほしい。
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