エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「あれを聞いていたのか」
「本当にごめんなさい」
「あのとき正直にキミを好きだと言って、彼女を刺激したくなかった。怒りの矛先がキミに向かうのは避けたかったんだ。どのみち彼女は仕事にもすぐ飽きて病院にも来なくなるだろう。そうしたらキミと一から話をすればいいと思ってた。でも」


雅史はそこで言葉を止め、楓を強く見つめる。


「昨夜、キミが男の車に乗り込んだのを見て、呑気にしている場合じゃないって」
「……見ていたんですか?」
「部屋を出たあと追いかけた」


あのとき『海老沢さん』と名前を呼ぶ声が聞こえたのは、幻聴ではなかったらしい。雅史が楓を追いかけてきていたとは。


「仕事を放りだして車を追うわけにもいかない。人生で一番長い夜勤だった」


雅史が困ったように笑う。『夜勤が明けるのをこんなに待ち遠しく思ったのは初めてだ』には、そういう意味が込められていたのかと腑に落ちた。
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