エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

院長、慎一の放った『あなたのお父様は、雅史との結婚は許さないでしょう』は、なにかの行き違いか勘違いだろうと自分を説き伏せる。


「楓のご両親にも挨拶に行こう」
「母は十年前に亡くなったんです」


楓が高校に入学して間もなくだった。
体調を崩して病気が見つかってから一年の闘病の末、この世を去った。


「そうだったのか」


雅史が神妙な面持ちになる。


「なので今は、父と兄との三人家族です」
「お兄さんも医師?」
「はい。海老沢総合病院で心臓血管外科医として働いています」


父の芳郎は次期院長の彼にも、楓と同じく縁談を進めるつもりでいるだろう。母は生前、芳郎のそんな考えに反対しているようだったが。


「ともかく、楓はなにも心配するな。ふたりでひとつずつ問題を解決していこう」


雅史の心強い言葉に頷き、運ばれてきた鴨胸肉のローストにナイフを入れた。
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