エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

慎一によると、大学時代にサークルを通じて知り合ったすみれとは結婚も視野に入れて付き合っていたが、両親の猛反対にあった。慎一は駆け落ちも辞さない気持ちでいたそうだが、すみれから身を引いたという。

その後、両親の勧める相手とお見合いをし、慎一は結婚に至ったそうだ。

すみれが友人の芳郎と付き合いはじめたのを風の噂で聞いたとき、なんともいえず苦しかったと。


「そんな私の気持ちが妻にも伝わったのでしょう。離婚こそしていませんが、妻はここ何十年も実家に帰ったきりです」


雅史には弟がおり、神楽総合病院で心臓血管外科医として働いている。その彼、利臣(としおみ)の出産で里帰りしたままだという。


「……母とは結婚後にも会っていたんですか?」


聞くのは怖いが、はっきりさせたかった。
もしも父が心配していたようにふたりの心が繋がっていたのだとしたら、あまりにも辛いが。


「いえ。別れたきりです」


慎一の返答に少なからず安堵する。
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