エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「今でも母を?」


率直な質問をぶつけた。
慎一はしばらく逡巡するように目線を彷徨わせてから微笑んだ。


「好きか嫌いかで言ったら、もちろん好きですよ。本気で愛した女性ですから、何十年経とうと嫌いにはなれない。でも、なにしろ三十年以上も前ですからね、愛情というよりは懐かしさでしょうか」


昔に想いを馳せるかのように慎一が遠い目をする。

慎一もその昔、楓たちのような辛い想いをしてきたのだろう。

もしも雅史と人生を歩めない未来があるのだとしたら、楓たちも慎一のように愛が形を変え、想いは薄れてしまうのだろうか。

べつの人の隣を歩きながら、胸に抱えるこの気持ちは違う形に変化してしまうのだろうか。
そう考えると堪らなく怖い。


「こうして見ると、あなたはすみれさんによく似ている」
「目元がそっくりだと言われます」


慎一が小刻みに頷く。
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