エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「そうでしょうね。でも海老沢という名字は別段珍しいものではないですから、まさかあなたが海老沢芳郎の娘だとは思いもしませんでした」
雅史に結婚したい相手だと紹介されてから調べ、そこで初めて知ったのは以前聞かされている。
「私も、院長と父の間にそんな過去があったなんて知りませんでした」
もしも聞かされていたら、採用試験は受けなかっただろう。
「あなたのアメリカ行きを阻止したのは、雅史がいたらこうしてふたりでゆっくり食事などできないと思ったのもあります」
たしかに彼がいたら、ふたりきりの食事は実現しないだろう。雅史の耳に入れば同行するだろうし、楓も誘いを黙ってはいられない。
「しかし、まさかすみれさんの娘さんと雅史がそういう仲になるとはね……。なんとも複雑な心境です」
困ったように小さなため息をつき、目線を落とす。