エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「いくら私たちが反対したところで、あなたたちはいい大人ですから。私が試みたように駆け落ちだってできるわけです」
「では――」
「かといって雅史はこの病院を捨てられない。多くの患者を抱えているのに、無責任に放り投げられる男ではないですから」


そことなく声が硬い。遠回しに〝あきらめなさい〟と言われている気がした。
雅史の医師としての信念を捻じ曲げるなと。


「さて、前置きが長くなりました。料理を楽しみましょう」


続々と運ばれてくる見た目も美しいコース料理と裏腹に、楓の気分は沈んでいく。

雅史との将来が白く霞み、手の届かないところへどんどん遠ざかっていくよう。


「――っと」


不意に慎一が箸を畳に落とした。手を滑らせたようだ。
すかさず楓が拾い、スタッフを呼んで新しい箸を用意してもらった。

慎一はそれを受け取りつつ、眉間を指で押さえる。
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