エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「この頃、どうも疲れが溜まっているようでね。眼精疲労なのか視界が悪いときがあるんですよ」


大病院の院長たる者、息をつく暇もないのかもしれない。


「どうかあまりご無理なさらないでください。少し横になったほうが」


料理を運んできたスタッフが「お布団をご用意いたしましょうか」と気を利かせてくれたが、慎一は首を横に振った。


「いえ、大丈夫ですよ」
「ですが……」


よくよく見て見れば顔色もあまり良くない。


「せっかくあなたとお食事の機会を設けたのですから、もう少し楽しませてください」


しかし慎一は、ふたりの仲を認めてはいない。

楓との時間を少しでも有意義なものだと感じてくれているのなら、せめて慎一だけでも許してくれればいいのにと願わずにはいられない。

いや、その問題とはべつに、慎一は楓にすみれの面影を探しているのではないだろうか。遠い昔に愛した女性を楓に重ねているのかもしれない。
ふとそんなことを思った。
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