エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

曖昧に答えながら壁に提げたカレンダーを見やる。五月中旬まで間もなく。朝夕は涼しいが、昼間は半袖でも十分な陽気になってきた。


《一カ月も超過してるのは私の気のせいか?》
「お父さん、ごめんなさい。わかってるんだけど、もうちょっとだけお願い」


楓の懇願に耳を貸してくれはしないだろうが、言わずにはいられない。

秘書の仕事が軌道に乗り、雅史との信頼関係も築かれつつある今、そのポジションを失いたくない。明日には一年勤めたお祝いをしてもらえるのに。
できるだけ長く雅史のそばで働いていたいというのが、なによりの理由だ。


《だが四年の約束だっただろう。もう十分自由にしてきたはずだ》
「それはそうなんだけど……」


実家の大病院を離れて過ごしたあとは必ず戻り、芳郎の勧める相手と結婚して共に海老沢総合病院を支えていくと卒業時に約束していた。楓に与えられたのは四年間の猶予であり、一カ月半前の三月末で期限が切れている。

自由な恋愛は望めず、いずれは父の決めた人との結婚が待っていると子どもの頃から覚悟していた。そういうものだと半ばあきらめていたし、大きな病院を守るためには致し方ないと悟ってもいた。
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