エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

しかし卒業を機に実家を出て、病院や父の庇護下から離れて生活するうちに〝あともう少しだけ〟と欲が沸き、ずるずると期限を引き延ばしている現状である。


《四年間だけ自由にさせてほしいという楓の約束を私は守った。次は楓の番じゃないのかね?》
「うん……」


そこを突っ込まれるとつらい。約束は守るためにある。
芳郎にとって、四年待つのは最大限の譲歩だっただろう。


《勤め先はどこだ。退職を言いづらいなら、私が言ってやろう》
「だ、大丈夫だから」


じつは芳郎には職場の話をしていない。それどころか、ひとり暮らしの住まいの場所すら明かしていなかった。芳郎の口添えで辞めさせられたらたまらないと警戒したためである。とはいえ、芳郎なら調べようと思えば可能だろう。


《では自分でしっかりけじめをつけられるんだな?》
「……はい」


そう答える以外になかった。
< 21 / 322 >

この作品をシェア

pagetop