エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

芹菜から送られてきた意味ありげな写真とメールに頭の中を占領されながら帰宅した楓は、いよいよ検査薬を試そうとトイレにいた。

もしも妊娠していたら芹菜を遠ざけられるかもしれない。躊躇っていた検査をしようと決意したのは、彼女からのメールを見たせいでもある。

雅史と離れたくないという願いが、楓を妊娠に縋りつかせる。でもそれは子どもを手玉に取った卑怯な方法でもあった。

それとはべつに、もしも本当に妊娠していたら大変だという憂いにも苛まれる。

ふたつの相反する想いに翻弄されつつ、説明書に従って手順を踏んでいく。

期待と不安が入り混じり、額に汗が滲む。
この結果が、雅史との未来を占っている気がしてならない。結果を待つ時間は、生きてきた中でもっとも長い三分間だった。

所定の時間が過ぎ、楓は呆然とした。

ふたつある窓のうち、判定終了を示すいっぽうには赤いラインがくっきり。それなのに判定結果のほうは真っ白のまま。
つまり陰性。妊娠していないという結果がもたらされた。

雅史との子どもは宿していない。
ふらふらの足取りでリビングに戻り、その場にペタンと座り込む。
目の前に突きつけられた結果にひどく落ち込む自分がいた。
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