エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「今日、やっと帰ってくるね」
医局の隣にある雅史の部屋に入るところで、楓を見つけた沙月が駆け寄って耳打ちをしてきた。彼女は手にしていたメモ帳と一緒に、首から提げた聴診器のチェストピースをポケットにしまった。
昨日、お互いの秘密を打ち明け合ったせいか、以前より親近感が増した気がする。距離感がどことなく近い。
帰ってくるのは、いわずと知れた雅史である。午後三時半に羽田着の便のため、今日は病院には顔を出さずマンションへ直行かもしれない。
チラッと確認した腕時計は午後三時。予定通りなら間もなく到着だ。
「あ、はい……」
「あれ? どうして浮かない顔なの?」
留守にしていた彼氏が帰国するのになぜ? と言いたいのだろう。
秘密を共有した仲とはいえ、あまりにもショッキングすぎて芹菜から届いたメールの件まで話せず口が重くなる。頭も心もキャパシティーオーバーだ。
急いで笑顔を作り、「そんなことないですよ」と返したが唇の端が少しだけ引き攣れる。
雅史からはアメリカを発つ前に【これから飛行機に乗るよ】とメッセージが届き、普段と変わらない様子だったが、本当のところはわからない。