エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
楓に来客の知らせが入ったのは午後五時半の退勤時刻を過ぎたときのことだった。
雅史宛てならまだしも、楓宛てにお客が来るのは初めて。相手が名乗らなかったらしく、誰だろうと首を傾げつつ総合受付カウンターへ向かう。
午後の診察時間は終了しているため、ロビーには会計を待つ患者が多くいる。
「お客様はどちらですか?」
声をかけた女性スタッフの手が「あちらでお待ちです」と指し示したほうを見て、目を見張る。
相手は「楓、こんにちは。いや、こんばんはかな」と右手を軽く上げた。マンションまで送ってもらって以来の英太だ。
ゆっくりとした足取りで楓のもとへやってくる。
「……誰かと思ったじゃないですか」
「驚かせようと思って名乗らなかったんだ。大成功みたいだね」
にっこり笑いながら楓の目の前で足を止めた。
「……それで今日は?」
「婚約者に会いにきたらおかしい?」
「婚約者じゃないと何度言ったらわかってもらえますか?」