エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「私は重森さんとは結婚しません」
「でも雅史さんともできないと思います」


間髪容れずに芹菜が返す。

そんなことはないと言い返したいのに、揺らいだ自信が唇の動きを封じ込めていた。
せめて目だけは逸らすまいと耐え、芹菜と睨み合う。息を吸うのも躊躇うくらいの緊迫状態を解いたのは、戻ってきた雅史だった。


「雅史さん、院長への報告お疲れ様でした」


即座に芹菜が雅史を労う。気分の切り替えの早さには驚く以外にない。
常日頃から冷静さを心がけているのに、楓は戸惑いの中から抜け出せずにいる。それも職場で雅史を前にしているのに。

雅史は芹菜に「ああ」とだけ返してから、楓に「ただいま」と告げた。


「お、おかえりなさい。出張お疲れ様でした」
「院長への報告も終わったし帰ろう」


なんとか笑顔で応えた楓の背中を包み込むようにそっと押す。
これまで雅史は彼女の前でそのような素振りは見せなかったのに、あからさまな見せつけ方だった。
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