エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「そうだよね。神楽先生には背負ってるものがあるもんね」
なんとかしてお互いの父親を納得させられればいいが、その手立ては今のところない。
そうこうしているうちに芹菜に奪われるような気がして体が震え、自分をかき抱く。
「海老沢さん、寒い?」
「あ、いえ、そういうわけではないんですが……」
背中がゾクッとしたのは、雅史を失う恐怖を覚えたせいだ。
「ちょっとごめんね」
伸びてきた沙月の手が楓の額に触れる。
「あれ? ちょっと待って。熱あるかも」
すかさずポケットから体温計を取り出した。大丈夫ですと言っても沙月は聞かない。
差し出されたそれを受け取り、楓が脇の下に挟む。
数十秒後にピピッと電子音をたてたそれを抜き取ると、小窓には〝37.8〟の数字が表示されていた。