エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「やっぱり。今日は早退しなさい」
命令なのに母親のように優しい口調だった。
「でも、まだ仕事が」
雅史は午前中の診察を終え、夕方から一件カンファレンスが残っている。楓も同席する予定のため、資料は楓のパソコンに入ったまま。外部から届いたメールも印刷しなければならない。
そしてなにより、芹菜をひとり残していくのが心配だ。
「そんなことを言ってる場合じゃないでしょ。今、神楽先生をここに呼ぶから」
「えっ、白石さん、待ってください」
ポケットからスマートフォンを取り出した沙月を急いで止めるが、「ダメダメ」と取り合ってもらえない。
「あ、神楽先生、お忙しいところすみません。ちょっとカンファレンスルームEに来ていただけませんか? ……はい、よろしくお願いします」
おそらく雅史は昼食から帰ったばかり。自室か医局のどちらかにいるだろう。