エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「いつも助かるよ。じゃ、俺は久保さんの様子を見てからあがるから、そうだな……一時間後に駐車場で待ち合わせよう」
雅史は腕時計を確認して、ハンガーに掛けておいた白衣を羽織った。
「あ、先生、今夜のお食事なんですが、その前にお話が」
「話なら店で聞く。ドタキャンはナシだと言っただろう?」
「っ……」
なんて鋭い。
断る雰囲気でも漂わせてしまっただろうか。雅史に先を越され、二の句が継げなくなる。
雅史は楓に向かって軽く手をあげ、戻ったばかりの部屋から再び出ていった。
(……どうしよう。困ったな)
これでは食事の席で話す以外にない。
楓は肩から脱力するように息を吐き、ストンと椅子に腰を下ろした。
ひとまず翻訳をキリのいいところまで進めよう。これ以上考えたら気分が滅入るだけだと、気を取りなおしてパソコンに向かった。