エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
それでも結婚を強要するのなら、この病院を離れることも視野に入れてもいい。楓以外の女性との未来ならいらない。
「芹菜さん」
慎一が芹菜に優しく呼び掛ける。
「申し訳ありませんが、今回の雅史との結婚話はなかったことにさせてください」
「えっ……」
ハンカチで目元を拭いながら芹菜が声を詰まらせる。
雅史は慎一の言葉にひとり静かに安堵していた。
「芹菜さんにこの病院の次期院長夫人は荷が重いでしょう。お父様には私のほうから謝罪させていただきます。結果的に振り回すことになり申し訳ありませんでした。この通り、お許しください」
慎一は立ち上がり、沈痛そうな面持ちで芹菜に向かって深く腰を折った。先ほどよりも顔色が優れないのが気がかりだ。
突然の展開が理解できずに呆然としていた芹菜だったが、ようやく自分の置かれた状況がわかったのだろう。悔しそうに唇を引き結んで立ち上がり、顔を真っ赤にして院長室を飛び出していった。