エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

返答しない慎一と睨み合う時間がじりじりと過ぎていく。
どうしてなにも答えないのか、その頭の中を読み解けない。


「院長」


雅史がそう呼び掛けたときだった。慎一の左腕から突然だらんと力が抜け、顔の左半分がいびつに歪んだ。


「ま……」


口がうまく動かず、呂律も回っていない。まさかとは思うが――。

この症状は脳梗塞だ。
急いで立ち上がり、ドアへ向かう。


「院長、ストレッチャーを持ってくるからここで待っててください」


そう言い置き、院長室を飛び出した。

帰国した夜、楓が慎一の体調を案じていたことを思い出す。

(なんであのとき……!)
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