エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

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楓が目を開けると、そこに暗がりが広がっていた。仕事を早退してからずっと、雅史のマンションのソファで眠っていたみたいだ。
確認した腕時計は午後九時を指している。


「雅史さん、まだ帰ってないんだ」


部屋には楓以外の気配がない。

今日は通常勤務だからとっくに帰ってもいい時間。救急搬送でもあったのだろうか。
バッグにしまいっぱなしになっていたスマートフォンを取り出すと、沙月からメッセージが一件届いていた。

【院長が倒れたの。今、神楽先生が処置にあたってる】

その文面を見て言葉を失くす。

(院長が……!?)

とっさに雅史に連絡を入れようとして思い留まった。メッセージが送られてきた時刻は七時過ぎだから、まだ処置中の可能性がある。

これだけではどういう症状なのかわからないが、急に倒れたとなれば心臓疾患か脳疾患だろうか。
以前、体調が悪そうに見えたときのことを思い出す。もしかしたらあれは前兆だったのかもしれない。
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