エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
彼に連れられてやってきたのは外資系の高級ホテルだった。ここにあるフレンチレストランの予約をしていると言う。
こういったホテルで両親と兄の四人で何度か食事をしたことがあるが、ここ数年そんな機会もないため、久しぶりに気分が高揚する。
でも今夜は大事な話をしなくてはならないと思い出し、気持ちの高ぶりもすぐに頭打ちになった。
普段は白衣やスクラブを着た雅史を目にしているが、今日は上質なスーツ姿。タイトなデザインは体の線にフィットして、彼の逞しさをより際立たせている。
姿勢の良さや振る舞いの美しさは、中学高校と剣道部の主将を務めただけある。行き交う人たちの視線が自然と彼に注がれた。
エレベーターを降りてついていくと、ある場所で立ち止まった雅史が「ここ」と楓に振り返る。壁に掲げられた看板にはフレンチレストラン『クールブロン』とあった。
名前を告げ、すぐに案内された個室は黒でまとめられたシックな内装。センスのいい大人の空間といった風情だ。
「俺は車の運転があるから飲めないけど、海老沢さんはワイン飲むだろう?」
向かい合って座るなり、メニューを開いた雅史が顔を上げて楓を見る。