エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「あ、いえ、私ひとりで飲むわけにはいかないので神楽先生と同じものでお願いします」
「せっかくのお祝いなんだから遠慮するな」
「いえ、今夜は大丈夫です」


重い話が待ち構えているため飲むわけにはいかない。

しかし楓がいくら断っても雅史も譲らず、押し問答の末、一杯だけワインをいただくことになった。

言いだしたら曲げない雅史の性格的な部分もあるが、以前、お酒は結構飲むほうだと話したのをきっと覚えていたのだろう。本当は飲みたいのに我慢していると考えたに違いない。つまり気遣いのひとつだ。
ほどなくして運ばれてきたワインとスパークリングウォーターで乾杯する。フレッシュでフルーティーな味わいが喉に心地いい。


「手術でお疲れなのに、こんな素敵なレストランに連れてきてくださってありがとうございます」


ワイングラスをテーブルに置き、改めてお礼を言う。


「たまたま執刀したわけでもないし、疲れとか気にするな。むしろ執刀直後は神経が冴え渡ってる」
「そうなんですか?」
「体の内側が燃えような。だからアルコールはかえって危険」
「火に油ですね」
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