エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

翌日、すっかり平熱になった楓は通常通り出勤した。

昨夜は雅史にメッセージを送信したあとにシャワーを浴び、ひとりきりで眠りについた。彼の匂いがするのにベッドに雅史がいない寂しさを覚えつつ、それに包まれる心地よさに目を閉じ、気づいたときには朝だった。

朝、スマートフォンを確認すると、彼に送ったメッセージは既読になっていたが返信はなし。やはり忙しくてそれどころではなかったに違いない。


「おはようございます」


声をかけたナースステーションにはすでに沙月が出勤していて、楓の声を聞いて奥から出てきた。


「おはよう。顔色はいいけど、仕事に来て大丈夫?」
「はい、おかげさまで。昨日はありがとうございました。ところで院長のお加減は……?」
「意識も戻られて、今は落ち着いてる。神楽先生が病室のほうにいると思うけど。……顔を出してみたら?」
「そうですね……。でも、もう少しお元気になられてからにします」


そうしたいのはやまやまだが、慎一にとって楓は遠ざけたい存在。安静にしなければならないときに顔を見せて、容態を不安定にさせたくない。

楓と雅史が強硬に結婚を進めようとしたため心労となり、今回の体調不良に繋がった可能性もある。
そう考えると、安易にお見舞いに行くわけにはいかなかった。
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