エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

*****

白いレースのカーテンから差し込む光が、徐々にその強さを増していく。

無機質な病室には医療機器の電子音が響くだけで、外とは違う世界にいるようだ。患者の家族は、いつもこのような異質の空気に晒されていたのかと、雅史は同じ立場になって初めて知った。

ベッドのそばに置いた椅子に座り、ベッドに横たわる父、慎一を見つめる。とても穏やかな寝顔だが、こうしてまじまじと見るのは初めてだ。

雅史にとって慎一は、父ではなく上司の感覚に近い。

母は弟、利臣の出産で雅史を連れて里帰りしたきり、慎一の待つ自宅へは戻らなかった。父親と過ごすのは誕生日やクリスマス、正月などのイベントのときだけ。子どもながらにその理由を聞いてはいけない気がしたため、雅史も利臣もそれに関してはいっさい口を閉ざしてきた。

母はおそらく、政略結婚で結ばれた慎一の心に、楓の母親である元恋人の影を見つけてしまったのだろう。

両親が長らく別居している理由は、楓から互いの父親の確執を聞くまで知る由もなかった。楓との間に、自分たちではどうすることもできない過去が隠されていたとは思いも寄らない。避けようのない、不思議な縁を感じずにはいられなかった。
< 273 / 322 >

この作品をシェア

pagetop