エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「心配をかけて済まない」


力なく首を横に振る静香との間に沈黙が舞い降りる。


「父さん」


雅史は、背中を押すようにして呼びかけに願いを込めた。
ふたりの間にあるわだかまりを解くなら今。すれ違い続けた想いをその口で伝えてほしい。


「静香、長い間悪かった」
「……え?」
「結婚してからずっと静香に勘違いをさせているのは気づいていたが、仕事の忙しさにかこつけて放置してしまっていたよ」


顔を上げた静香が慎一をじっと見つめる。


「私は静香に感謝してる。こんな俺と結婚してくれて、ふたりの息子たちに愛情を注いでくれて……。なにより、離れて暮らしているのに夫婦の形を崩さずにいてくれたことに」
「……ごめんなさい。私、妻らしいことをなにひとつしていないのに」
「それは私に責任がある。静香、ずっと言えずにいたが、……私はキミを大切に思ってる。今さらと言われたら返す言葉もない。……でも、嘘偽りのない本心だ」
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