エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

三十年以上の時を経て慎一の口からやっと出てきた言葉に、雅史は利臣と顔を見合わせて頷き合った。


「あなた……」


ベッドの上に投げ出されていた慎一の手を静香が取る。


「うれしい。ありがとう」


静香の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
ふたりの人生はここからまた新たな時を刻んでいく。何事も遅すぎるということはない。


「兄さん、俺たちは出よう」


邪魔者は早く退散しようと言うのだろう。


「そうだな」


利臣の提案に頷き、引き戸を開けた雅史を慎一が引き止める。


「雅史、反対して済まなかった」


そのひと言に楓との結婚を許す意味合いが含まれているのは、ひしひしと伝わってきた。
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