エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
誠也に言われ、素直に二階に足を向ける。
階段の先に上がるのはどれくらいぶりだろう。約束の期限を目前に控えた正月のときは、お昼におせちを一緒に食べただけで逃げるようにしてマンションへ帰ってしまった。
それより前だとしたら、さらに一年前の正月か。
そんなことを考えながら芳郎の寝室の前に立つ。ノックをしたが、眠っているのか返答がない。
そっとドアを開け、中に足を踏み入れた。
十四畳ほどの部屋の中央に大きなベッドがあり、芳郎はそこに横になっている。スリッパの音を立てないように静かに近づくと、規則的な寝息が聞こえてきた。
顔色は目に見えて悪い。心なしか頬がこけたようも見える。
(やっぱり私が原因だよね……)
雅史の父親に続き、自分の父親にまで心労を負わせ、なんともいえない気持ちになる。
幼い頃からの言いつけ通り、芳郎の決めた相手との縁談を進められれば、こんなふうに倒れることもなかったのかもしれない。
楓が四年の猶予を欲しいなどとワガママを言わなければ。
神楽総合病院で働かなければ。
そうすれば、慎一も芳郎も過去の因縁に再び傷つけられる事態にはならなかっただろう。