エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
暗くなりそうな雰囲気を払しょくすべく、無理に明るくした。
《そうか……》
「今夜は実家にいますね」
さすがにこんな状態の父親を放ってはいけない。
《そうだな、そうしたほうがいい。しばらく仕事も休んで付き添ったほうがいいんじゃないか?》
雅史に提案されて心が揺れる。
雅史は気遣って言っているに過ぎないだろうが、楓の不在中に芹菜が彼との距離を縮めるのではないかと不安が頭をもたげた。気が滅入っているため、つい悪いほうへ考えてしまう。
「でも仕事が」
《仕事よりそっちが大事だ》
雅史の言い分は決して間違いではないため、楓もそれ以上は食い下がれなかった。
《話は楓が戻ってきてからにしよう》
「……はい。すみません、仕事のほうよろしくお願いします」
そう返す以外にない。楓は複雑な気持ちで雅史との通話を切った。
その後、芳郎の妹、尚美も見舞いに駆けつけ、兄の誠也も含めた三人で束の間の団欒となる。家政婦が作ってくれた夕食を食べ、尚美と誠也は実家をあとにした。