エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

英太は、右隣の椅子を引いて楓を座らせた。
首を横に振る楓に先を続ける。


「久しぶりに再会したら〝あぁ俺はやっぱり楓が好きだったんだ。あのときお互いの気持ちを信じればよかった〟って。ずっと心の奥深くに楓がいた」


真剣な表情は、決してジョークではない。再会してからどことなく軽い調子だった英太が見せる、久しぶりの誠実な一面だった。


「でも私は」


楓が言いかけたそのとき、ポケットに入れていたスマートフォンが着信を知らせて鳴り響く。取り出したらそれは雅史からの電話だった。

今夜はたしか夜勤の予定だから病院からだろう。
英太にひと言断り、座ったまま彼に背を向けて応答をタップする。


「もしもし」


耳にあてるとすぐに《楓》と雅史の声が聞こえてきた。こうして電話やメッセージのやり取りはしているが、一週間よりもっと長く会っていない気がしてならず、胸の奥がきゅうっと狭まる感覚だ。
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