エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

英太が「今夜はここに泊まろうかな」とおもしろがって言うのと、電話の向こうで《神楽先生、ちょっといいでしょうか》という看護師の声が聞こえるのが同時だった。


《楓、ごめん、またかける》


雅史は慌てるようにして電話を切った。


「英太さん、今のはなんですか? どうしてお風呂なんて言うんですか」


なにもないのはわかってもらえるとしても、雅史は気分を害しただろう。


「そんなの簡単だ。楓を神楽雅史から奪いたいから。俺は楓の父親も認める婚約者」
「婚約なんてしてないですから」


雅史とは将来を誓い合ったが、英太とはとっくの昔に終わっている。


「もう帰ってください」


椅子をガタンと鳴らして立ち上がる。これ以上、英太と話していても平行線で埒が明かない。
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