エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「――嘘でしょ。開いちゃった」


自分で数字を選んでおきながら、まさかという想いのほうが強かったため驚きのほうが大きい。

母が秘密にしておきたかったものを暴く申し訳なさと、なにが書かれているのだろうという緊張が胸を高鳴らせる。

もしも雅史の父、慎一への愛に溢れた内容だったら、そのときは黙って閉じよう。


「お母さん、ごめん、読ませてもらうね」


ひと言断りページをめくった途端、懐かしい母の文字が現れた。

今日は誰と食事をした、楓や誠也とこんな話をしたなど、何気ない日常が綴られていく。庭の草花の芽吹きや空模様にも触れられ、そのときどきの季節を感じさせる内容だ。
リビングから見える庭の四季の移り変わりが目に浮かび、それを穏やかな笑顔で見つめる母親が思い起こされ、懐かしさに包まれる。

病気が見つかったときのものは、母親として妻としての生への執着が書かれていた。

なによりも目を引いたのは入院中の日記だ。
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