エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

どのページにも〝芳郎さん〟があり、こんなことを言ってくれた、笑顔を見せてくれたなど、まるで恋する少女のような初々しい文章が切々と綴られていた。

(やっぱり……)

母の想い人は雅史の父ではない。父、芳郎を愛していたのだ。
失恋を癒してくれた芳郎に、たしかに恋をしていた。

それなのに父は三十年以上も勘違いし続け、未だに燻った想いを抱えている。
最後まで読まずに日記を閉じ、楓は芳郎の寝室に向かった。

(お母さんの気持ちを届けなきゃ)

楓はその一心だった。

ノックと同時にドアを開け、パタパタとスリッパの音を響かせて中に入る。


「お父さん」
「なんだ、騒がしいな」


ベッドに入って本を読んでいた芳郎は、老眼鏡を外して訝しげにした。


「ごめんなさい。あのね、お母さんが残してた日記、覚えてる? これなんだけど」
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