エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

「それは親のエゴだったのかもしれません。自分は好きな女性と添い遂げたのに、娘にはそれを許さなかったのですから」


妻の残した日記が、芳郎の頑なな心を溶かしたのだろうか。病み上がりなのも影響しているだろうが、その表情は久しぶりに見る穏やかなものだった。


「妻に諭されてしまいましたよ。こんなところに遺言を残しておくなんて、妻もなかなかなものです」


手にしていた日記の最後のページを開いて楓によこす。


「……読んでいいの?」


芳郎が頷いたため、楓はそこに目を落とした。

楓が読んだ日記の最初の頃に比べて、文字にか弱さを感じる。でもそこには芳郎はもちろん、楓にも送られた愛の言葉が記されていた。

【私は芳郎さんと結婚できて本当に幸せでした。愛する人と人生を歩める幸せを子どもたちにも伝えたい。芳郎さん、どうか誠也と楓が心から愛する人と一緒になれるよう見守ってあげてください】

締めくくられるように書かれた日付は亡くなる二日前のもの。最後の力を振り絞って書き残したに違いない。
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