エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「ですが、院長――」
「話はそれだけです」
反論しようとした言葉まで止められ、それ以上は聞かないと言わんばかりに慎一が立ち上がる。
「院長!」
話をさせてもらおうとしたが、丁寧口調とは裏腹にその態度は強固なものだった。
「そろそろ診察の時間ではないですか?」
腕時計を見て、それとなく退室を促す。
同時にドアが開かれ、田所が姿を現した。まるで計ったように「神楽先生、こちらへ」と、慎一同様に部屋から出るよう催促した。
仕方なく立ち上がり、「失礼しました」と頭を下げて院長室をあとにする。なんともいえない葛藤を抱えながら、雅史は診察室のある階下へ足を向けた。
退職した秘書の後任として医事課から楓が異動してきたのは一年前。それまでの秘書は今ひとつで、中には雅史に熱を上げて一方的に盛り上がり、仕事そっちのけになる者もいた。
今度もまた似たり寄ったりだろう。秘書など煩わしいだけだ。
彼女にも、さして期待はしていなかった。