エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「……あ、いえ」
急いで笑顔で取り繕う。
(やだな、あたり前の展開じゃない。神楽先生には先生の人生があるのはわかっていたんだから)
昨夜は、ひととき脇道に逸れただけ。本来の道に戻ったに過ぎない。
「なんだか顔色が悪いけど」
「ちょっと寝不足なだけですので大丈夫です」
これは本当だ。その理由は決して明かせないが。
「そう?」
沙月がさらに注意深く楓の顔を窺ったときだった。ドアの向こうから「白石師長」と沙月を探すような声が聞こえてくる。
「私、行かなくちゃ。神楽先生の続報が入ったらまたね」
沙月は楓に手をひらりと振り、聞こえた声に「はーい」と応えて部屋を出ていった。