エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない
「本当にそうじゃないんです」
「その痕は蚊とは違うでしょう。どんな人なの?」
沙月がさらに追及の手を強めてきたところで「ここ、いい?」と、小児外科の医師、倉持が現れた。
三十三歳の倉持は、いかにも小児科のドクターといった優しい雰囲気の男である。ふわっとした癖毛の髪と柔和な顔立ちは、そんな人柄をよく表している。
倉持は沙月に向かって声をかけたが、当の本人がなにも答えないため楓が代わりに「どうぞ」と返した。
(白石さん、どうしたのかな……?)
誰に対しても分け隔てなく接する沙月が、珍しく返事もしない。
倉持はコンビニで買ってきたのか、手にしていた袋からおにぎりやサンドイッチを取り出していく。最後に出したプリンは沙月の前に置いた。
「白石さん、これ好きだったよな」
今人気の限定商品で、入荷と同時に売れてしまう商品だとネットニュースで見たことがある。沙月の好みを覚えていて、わざわざ買ってきたらしい。
ところが沙月はそれを「結構です」と素気なく倉持に突き返した。