エリート脳外科医の独占愛に、今夜も私は抗えない

その日の夕方、退勤時刻を過ぎ、楓がスタッフ専用の通用口に向かっていると雅史が追いかけてきた。


「海老沢さん、ちょっと待って」


楓の後ろを歩いていたスタッフが、立ち止まった楓と追いついた雅史を見ながら通り越していく。


「なにか、しそびれた仕事がありましたか?」


今日中に終わらせるべきものは完了させたつもりだが、うっかり忘れたものでもあったか。昨夜の一件と雅史の縁談とで動揺しているため、あり得ない話ではない。


「いや、そうじゃない。今朝の続きを話そう」


雅史は軽く頭を振り、楓を真っすぐ見た。今朝の続きと言ったらひとつしかない。


「昨夜のことだけど――」
「それでしたら先生のご心配には及びません」


言いたいことはわかっているため、雅史を遮って結論を急いだ。大事な縁談がある彼に余計な心配はかけたくない。
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